Chochotteの靴は職人の分業による日本製
一足の細幅靴はたくさんの『職人の手』を経て完成します。その職人たちをつなぐ存在といえるのが、製靴の工程を熟知した営業企画の倉本 光治さんです。有名アパレルブランドなどの靴づくりの現場に40年以上携わってきた倉本さんの仕事を通して、普段は目にすることのない『靴の中身』をたっぷりご紹介します。
「一足ずつ作って一人ひとりに届ける。それが靴作りの基本です。」
有限会社ブリック 倉本 光治さん のお話し
「こんな靴がつくりたい。」というアパレルブランドやデザイナーの依頼を受けて、彼らのデザイン画を実際の靴の形にしていくのが私の仕事です。
もらった要望にはできるだけ応えますが、独立するときに「嫌なものは嫌だと言えるメーカーになる。」と嫁さんに誓ったのでね(笑)。デザインが良くても、履いたときに問題が出そうな仕様については遠慮なく「ノー」と言わせてもらいます。
それで「一体どうしたらいいの?」と相手が困らないように、「こうしてみたら?」と解決策もちゃんと用意する。そういうメーカーでありたいですね。
Chochotteの細幅靴のための材料探し
細幅靴で苦労するのは、まずヒール探しです。
小さいかかとに接着できるヒールは少なく、選んだヒールがちょっと大きいこともある。そんなときは「中底を少しだけ大きくして接着しようか?」などと、何か方法を考えます。
それから革。天然の革は一つとして同じものがなく、靴材料としては揃えるのも扱うのも大変です。だけど、天然の革には伸縮性や通気性があってとても履き心地がいい。
以前、Chochotteのレインシューズが合皮から本革へとリニューアルされたときは、菊池さんから「できれば天然の革を使いたい。」というリクエストをもらったので、防水性のある天然皮革を探して提案しました。リニューアル前よりも風合いのいい蒸れにくいレインパンプスになったと思いますよ。
見えない下ごしらえに手を抜かない
いい靴は、かかと周辺にホールド感があって、足にフィットする感覚があります。そういういい靴を手がけたいなら、見えない部分へのこだわりも大事です。材料の“下ごしらえ”にも手は抜けません。
たとえば、かかとに挟むカウンターという芯材には、革素材で伸縮性のあるタイプと、カチカチの素材で形が固定されたタイプがあるけど、うちでは革のカウンターを使います。
革のカウンターは手間がかかるから、流れ作業で安く作りたい靴には向きません。カチカチの芯を使ったほうが見た目も均一で早く作れます。でもいくら履いても足の形に馴染まない靴になるので、人によってはすぐに靴擦れしてしまいます。
革のカウンターは既製品なので、形やサイズは製靴の職人が細幅靴のデザインに合わせて調整しています。革は手仕事との相性がいいし、下ごしらえもしやすいですね。
一足ずつ作って一人ひとりに届ける靴
Chochotteの靴はお客さんからの受注生産品なので、一足ごとにデザイン・サイズ・色の組み合わせが違います。サイズも23.5cmなどの足長と、A・2A・3Aなどのワイズがあるから、流れ作業でつくることはできません。
でも靴って本来そういうもので、一足ずつ作って一人ひとりに届けることが、靴づくりの基本だと思います。
日本の、とりわけ東京の靴づくりは職人の手仕事で成り立っていて、工程ごとに職人が変わります。動力が導入されて人の手が機械に置き換わった工程もあるけれど、それは一部分にとどまっています。
ではこれから、Chochotteの靴の革を裁断する工程と、製甲職人や底付け職人の仕事場を案内しましょう。
製靴のおもな工程
- ヒールや革などの材料を選ぶ
- 木型をもとに紙型師が靴の紙型(パターン)をひく
- 紙型をグレーディング(サイズ変更)した型紙を作成
- 型紙からパーツ別の抜き型(金型)を作成し、革を裁断
- 製甲職人が甲革(アッパー)を縫い合わせる
- 底付け職人が靴型(生産用木型)にセットした中底に甲革を固定
- 中底に固定した甲革の凹凸をグラインダーで削る
- 成形のため靴型ごと2日ほど寝かせて、革や芯を馴染ませる
- 本底をつけ、靴型から取り外してヒールをつける
- 中敷きを入れ、革の表面をふいて熱風とコテで綺麗に整える
木型から型紙をつくり、革を裁断する
製甲職人の仕事
底付け職人の仕事(つり込み工程)
靴作りで誰かをサポートできるように
見てもらったように、靴ってどこまでも人の手がかかるでしょ? ちなみにヒールパンプスのようなエレガンスな靴と、カジュアルな靴とでは使う革の厚さとかミシン糸の番手が違うから、職人も変わります。どんな靴も手がけてきたという職人はあまりいないので、一人ひとりの技術も専門性が高いのです。
この仕事をしていると、よく知人の女性からも「履ける靴がない。」という話を聞きます。足のサイズが小さかったり細かったりして困っている人のための靴は、全体数に比べてまだまだ生産数が少ないからでしょうね。
Chochotteの細幅靴は、木型もデザインもここまで追求して作っているから、合う靴がなくて困っている人たちにもっと知ってもらえるといいですね。 私もいい靴をつくるために、これからも靴作りに一生懸命なデザイナーや職人をサポートしていきたいと思っています。
Chochotteの靴作りの様子はいかがでしたか?
オーダーされたみなさまには、靴作りに携わる人々がそれぞれの想いを込め、タスキリレーのような連携で完成させた一足の細幅靴を、大切にお届けいたします。どうぞ、お楽しみに。