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Chochotteデザイナーインタビュー

履ける靴より、好きな靴を選べるように

写真:Chochotteデザイナー菊池の近影

Chochotteは足囲が細い・足幅が狭い・甲が低い人のための細幅靴ブランドです。すべてメイドインジャパンでデザインは木型からオリジナル。今まで「履ける靴」で妥協してきた人が「好きな靴」を選べるようにしたい、というデザイナーの菊池に、靴づくりに込める想いを聞きました。

聞き手:ライター 細井


Chochotteデザイナー 菊池 聖子 プロフィール

20歳で細幅足を自覚し、履ける靴をずっと探してきた

Q.細幅靴に特化したChochotteを始めたのは、やはりご自身が細幅足だったからですか?

自分の足が幅狭甲低だぞ、と気づいたのは20歳の頃です。靴をフルオーダーしたのがきっかけで、足のサイズを初めて測ったら37のBワイズでした。それまでは指に靴ずれが出来るから「私は幅広足だ」と思い込んでいました。まさか細幅足だったなんて、衝撃でしたね。

以来ずっと、手頃な細幅靴を探してきましたが、普通の靴売り場ではまず扱っていません。やっと履けるサイズが見つかっても、デザインがいまいちで、かかとはすぐに脱げるし、歩くと足が前に滑って指は曲がるわ、骨は痛いわで、靴選びは失敗の連続でした。

そんな私に転機が訪れたのは、今から十数年前。友人に誘われて、足囲が細い人たちのネットコミュニティに参加したときです。
当時の私は、小売店向けにC幅くらいの靴を作っていたため、コミュニティでアトリエセールのお知らせをしたところ、たくさんの細幅足さんが来てくれました。

しかし当日、試着の様子を見ていると、C幅だとゆる過ぎる人がとても多くて、Aワイズ以下の靴を必要としている人が圧倒的多数でした。Aワイズの靴は国内でも海外でもほぼ作られていない時代だったので、Aワイズ以下の細幅足さんのお悩みはかなり深刻だったのです。

ことの深刻さを知った私は、「ならばChochotteは、A・AA・AAAワイズの靴づくりを最優先でやるブランドにしよう!」と、決心しました。

正直、もう少し大きい自分の足に合うサイズを優先したい気持ちもあったけど、ぐっとこらえて(笑)。それほど当時のA幅靴をとりまく状況は厳しかったし、切実なニーズを感じましたね。

幅狭プレーンパンプスAdeleの集合写真
Adele(アデル):ヒールパンプスが欲しい!とのラブコールにお応えして誕生したChochotte初の5cmヒール幅狭パンプス。細幅靴を始めたばかりの頃は、木型づくりもデザイン調整も大変でした。ロングセラーの靴には思い出が詰まっています。

履ける靴より、好きな靴を選べるようにしたい

Q.靴づくりの知識は、故熊谷登喜夫氏のアシスタント時代に培ったものですか?

基本は靴の専門学校で勉強しましたが、木型をミリ単位で修正するといった経験を積んでより深く学んだのはアシスタント時代です。

TOKIO KUMAGAЇは独特な世界観を持つブランドでした。日本よりもヨーロッパでの知名度が高く、パリの服飾美術館に納められた靴も数多いことで知られています。
私はおもに靴のデザインに携わっていたけれど、アパレルブランドとしてファッションショーも開催していたので、ショーの服と靴をコーディネイトしたり、モデルのフィッティングを手伝ったりしていました。
靴をデザインするときは、意味のない飾りは許されず、そのデザインに機能としての必要性があるのか、ファッションとしてのユーモアはあるのか、といったことを探求するようにと言われました。
登喜夫先生の厳しい審美眼のもと、靴だけでなくファッションそのものを学ぶことができた、とても幸せな時代でしたね。

ただ、細幅足の私は自分が手掛けたものでもパンプスは履けなかったから、ひも靴やブーツを厚手のソックスと中敷きで調整して履いていました。
それが当時のファッションに合っているうちはよかったのですが、トレンドがフェミニン全盛になった途端、手持ちの靴ではコーディネートできなくなってしまって。膝丈タイトスカートを着たくても、それに似合うヒール靴は前滑りして指が痛くなり、かかとが脱げて歩けませんでしたから。

きっと細幅足のみなさんも、手持ちの靴が着たい洋服にマッチしなくて、心底ガッカリする経験をたくさんしてきたのではないでしょうか。

Chochotteを始めるとき、デザイナーとしては、そうした状況こそ変えたかった。「履ける靴」で妥協してきた人が「好きな靴」を選べるようにしていきたい、という気持ちがデザインのモチベーションになっています。

モードな幅狭ミュールErikaの集合写真
Erika(エリカ):2019年の新作、かかとの脱げにくいモードな幅狭ミュール。夏は素足で、春や秋は厚手タイツで楽しめます。いろいろなコーデを楽しんで欲しい!と想像しながら楽しくデザインしました。

とことん粘って、足にフィットする靴をつくる

Q.Chochotteの靴がおしゃれなのは、ファッションの楽しさを大切にしているからなのですね。一方、靴探しに苦労してきたみなさんは、細幅靴が足にどれだけフィットするのかも重要視していると思います。その点はいかがですか?

まず、靴の履きやすさや、歩きやすさを実現するために、オリジナルの木型づくりにこだわっています。さまざまな足の形状や悩みにできるだけ対応したいので、各木型のフォルムに特徴をもたせ、種類も増やしてきました。今は5種類の木型を使って生産しています。

この5種類の木型それぞれに個性があるので、お一人おひとりの足の個性と、相性のいい木型で作られた靴を選んでいただきたいなと思っています。

画面キャプチャ:木型ごとの靴の一覧表の一例
Chochotteオンラインショップの靴のサイズの選び方ページには、木型ごとの靴の一覧を載せています。各商品ページにも、その靴がどの木型から作られているかを表示していますので、ご参考にしてください。

残念ながら、お1人の足にすべての木型が合う、というわけではありません。木型によってトウの形もヒールの高さも決まっているので、「このデザインをこっちの木型で」ということもできない。

「それなら、もっと木型の種類を増やしてー!」という声が聞こえてきそうですが、簡単にはできないのが心苦しいところです。細幅の木型をつくるのはとても難しく、1つ完成させるのに1年前後の日数がかかっているので……。

木型づくりの工程では、靴の試作品を作り、試し履きをしながらフォルムの調整をします。洋服でいうと仮縫いと試着のような作業を何度も繰り返すんです。
たとえばヒールパンプスは、木型をどんなに細く設計しても足が多少は前に滑ってしまうので、どこを強くホールドさせ、どこで余裕を持たせるかのバランスが難しい。しかも足の形は百人百様。非常に複雑な立体で、柔らかく、どんな動き方をするかも個人差が大きいので、このデザインで行こう!と決断する段階にきても、本当にそれでいいのかどうか最後まで迷います。

そんなとき、私がとても頼りにしているのが、細幅コミュニティで出会った方々や、Chochotteユーザーのみなさんからいただくコメントの数々です。
Aワイズの靴を作り始めて10年が経ち、みなさんのコメントも10年分蓄積されています。それを靴作りの資料や参考にしながら、「どうやったらもっと足にフィットさせられる? ホールド力が出る?」と木型や靴のデザインにとことん悩み、とことん粘って、Chochotteらしい答えを導いています。

みなさんの声のおかげで壁にぶち当たったときも何かしらのヒントをもらえるし、トライ&エラーを積み重ねればもっと良い細幅靴になるぞ、という確信も育ってきました。
今後もどしどしご感想をいただいて、必要に応じてブラッシュアップを重ねながら、よりよい靴づくりを目指していきたいです。

幅狭バレエシューズNicoleの集合写真
Nicol(ニコル):Chochotteが最初に作った細幅靴。今も細幅靴の1足目として選ぶ人が多い人気の細幅バレエシューズです。より良い靴にするために仕様のブラッシュアップをしています(2019年7月現在)。

Bワイズだった足が、Aワイズになった理由

Q.2009年に細幅靴づくりを始めて10年、その間に大きく変わったことはありましたか?

一番びっくりしたのは、私の足のサイズがBワイズからAワイズになったことですね。細幅靴づくりを初めて4年が経った頃、久しぶりにちゃんと計測したら、足長が約3mm伸びて、足囲は8mm近くも細くなっていました。

足って、良くも悪くも変化するんですよ。
普段から足のサイズに合う靴を履いている人は、本来の健康的な足を保ちやすいし、逆に足に合わない靴を長年履いてきた人は、本来の足の形が崩れたり、外反母趾などのトラブルが起きたりします。

悪い例として代表的なのが開張足です。開張足とは、細い足に合わない靴(ゆるい靴)を履き続けた結果、靭帯がゆるんで指付け根の横アーチが崩れ、体重がかかると甲が薄くつぶれて広がる足のこと。
私もChochotteを立ち上げるまでは、市販の靴から「なんとか歩ける靴」を探して履いていたため、足にぴったり合っていたわけではなく、やがて開張足になってしまいました。親指は巻き爪にもなってしまったのですが、今ではほぼ解消されています。

解消できたのは、第一に自分の足のサイズを正確に把握し、第二に靴選びの基準を「なんとか歩ける靴」から「自分の足に合う靴」へと変えたからです。

足に合う靴を履くようになって、歩く姿勢なども意識し始めることで、だんだん足が健康的な状態に戻っていくケースは多いです。開張足が少しずつ矯正されて横のアーチが整い、曲がっていた指が前に伸びて足長が長くなっていく。またそこから、土踏まずが持ち上がって、足長が短くなることもあるんですよ。

私だけでなく、Chochotteの細幅靴を愛用していただいている人のなかにも、同じようなプロセスをたどった人がたくさんいます。その結果、何が起きるかというと、足が安定感のある状態に戻って歩行しやすくなるので、かかとを覆わないサンダルとか、よりさまざまなデザインの靴を楽しめるようになります。

正しい靴選びは、まず自分の足の形を正しく把握することから始まりますので、ぜひ一度、足のサイズを測ってみてくださいね。

Chochotteの靴のサイズの選び方はこちら

Chochotteの足のサイズ計測シートダウンロードはこちら

リーフトウの幅狭ローヒールパンプスMonicaの集合写真
Monica(モニカ):3cmヒールの幅狭プレーンパンプス。丸みを帯びたリーフトウなので指先がのびのび。細幅靴は単に幅が狭いわけではなく、かかとにホールド性をもたせて足が前滑りしにくく指先が伸びることを重要視して設計しています。

好きな靴を履いたら、楽しみも広がっていく

Q.サイズ計測はちょっと大変そうだけど、ちゃんと自分の足に合う靴を選べば大きなメリットが得られそうですね。最後に、メッセージをお願いします。

幅狭甲低足のみなさんへ。
いつもChochotteを応援してくださり、ありがとうございます。

最近、『細幅靴の試着サービス』を始めました。これまで通りメールでのご質問も大歓迎ですが、実際にフィッティングしてみると、ご自分の足にどの木型が合うのか、とてもわかりやすいようです。いろいろな感想をいただけるので、私にとっても新たな発見があります。

試着とは別に『体チューニング講座』も始めたのですが、これがまたとっても楽しい。
サイズが合っている靴を履いていても、それを履く体が整っていないと解決しないことも沢山あるなと感じているので、姿勢などの体の癖や、普段の体重のかけ方、歩き方をご自分で簡単に整える方法をお伝えしています。
みなさん、正しい姿勢で歩けるようになると、前よりもずっと足が綺麗に見えたり、笑顔が素敵になったりします。

そんな姿を目の当たりにすると嬉しくて、やっぱり「靴は履けたらラッキー」で満足せずに、「好きな靴を履いたら楽しくなった」というゴールを目指さなきゃ、とあらためて思いました。

(※2021年現在、試し履きサービスは行っておりません。)

これからもみなさんの感想を励みに、A幅靴の履きやすさやフィット感を追求しつつ、毎日のコーディネートやお出かけが楽しくなる靴をお届けできるようにがんばります。

細幅レースアップフラットシューズMarionの集合写真
Marion(マリオン):試着会でも歩きやすいと好評だった細幅ひも靴。